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2.変わらなかったこと

 同田貫正国が修行から戻ったのは、六振の手入れが終わった日の夜だった。
 審神者が出迎えたと聞いて、歌仙兼定も急いで出迎えに向かった。途中、ばったりと出会う。
「お」
 ぱっと笑顔になった同田貫正国。印象的で、歌仙兼定は一時目を離せないでいた。
「帰ったぜ! 元気だったか?」
 ああ、と歌仙兼定は頷いた。修行から帰ってきてまだ気分が高揚しているのか、戦の時の同田貫正国を連想する快活さだ。
「君こそ」
「俺はこの通り! 強さは一緒に出陣すれば分かる」
 自信たっぷりに笑む同田貫正国。なんだか、あまり変わらないようだ。ほっとした。
「おかえり、同田貫」
「おう」
「旅の話を、また聞かせてくれよ」
「ああ。色々あったぜ。…今日はもう休むとするか。お前も、出陣で疲れてるんじゃねえの?」
 主から聞いたのか、今、察したのか。分からないが、歌仙兼定は笑った。
「僕は大丈夫だと言っただろう? 君こそ、久しぶりに自分の部屋でゆっくり休むといい」
 そうだな、と同田貫正国。にっと笑う。
「あんた頑丈だもんな。じゃ、また明日。出陣させてくれっかなぁ…!」
 本当に楽しみだというふうに笑う。どうやら修行によって、戦や強さへの思いをさらに強固にしたのか。
「主も君のことを分かっているだろうから、連帯戦に参加することになるんじゃないかい」
「っし! ああ、待ちきれねえぜ…!」
「ちゃんと休息を取って備えたまえよ」
「わぁってるよ!」



「おう、歌仙! 手合わせしてくれよ!」
 翌朝。早朝。ああ、早朝も早朝、日が昇ったところだ。きっちり戦装束に身を包んで、同田貫正国は歌仙兼定の部屋を訪ねた。以前、声かけもなしに襖を開けて怒られた。それからは返事があるまで開けないようになった。進歩だ。
「おおい、歌仙。…なんだ、珍しく朝寝坊か?」
 少々声を落とした。昨日は本当に疲れているようだったから、積もる話も手合わせも遠慮した。
 歌仙兼定は頑丈だが、あの戦場に出陣続きだったのなら、一度しっかり休んで万全になってから手合わせしたほうが楽しいだろう。
「仕方ねえな…和泉守は…寝てるだろうしなぁ…蜻蛉切か…」
 この本丸で総合的に一番強いのは歌仙兼定だが…。
いやこの早朝でも、山伏国広あたりなら既に手合せ場にいるかもしれない。
 あまり期待せずに、とりあえず手合せ場を覗きに行ってみた。誰かいるようだ、と、見ると、内番着の歌仙兼定だった。ただ、髪は結んでいない。
 朝から手合せ場なんて珍しい。朝寝坊と同じくらいに。何かあったのだろうか。
 ――あ、俺が帰ってきたからか?
 思い当たるのはそれくらいしかないが。
 真面目で綺麗な太刀筋――のようでいて、少々荒い。やはり何かあったか。
 同田貫正国は手合せ場に無言で入っていき、木刀を掴んだ。気がついた歌仙兼定に鋒を向けて、にやりと笑う。歌仙兼定もちらっと笑んで、構えた。
 張り詰めた空気。ぴりぴりと肌で感じる、戦場の空気だ。相手から目を離せば斬られる。どう出る――探り合いを破ったのは同田貫正国だった。怒声と共に正直すぎる一撃を叩き込む。本丸最強の歌仙兼定はそれを正直に受け止める。
 激しい音が鳴り響いた。木刀越しに二振は不敵に笑って、彈きあって距離を取る。その距離は一瞬でまた詰まる。
 そこからは息つく間も無かった。打ち合いの音が鳴り、時々気合のこもった声が響く。刀も手足も体すべてを使って、得物が木刀であることを除けば実戦さながらの斬り合いだ。
 白い着物に一撃を叩き込みそうになって、同田貫正国は我に返った――自分は戦装束だが歌仙兼定は内番着だ。当然だが刀装もない。休むべきこの日に、下手をすれば中傷になりうる。
 ほんのわずかに鈍ったその刀を、歌仙兼定は受け止めた。受け流すには、力の向きが良くなかった。
 息を荒げたまま、お互いに木刀を下げた。
「そういう気遣いは不要だよ」
 歌仙兼定がさらりと言う。
「万全じゃねえ奴ノしてもなぁ」
 同田貫正国の言葉に、歌仙兼定が、ほう、と。
「僕がそう簡単にノされてあげると思うかい?」
「へへっ、思わねえな。朝飯食ってから、戦装束に着替えてやろうぜ」
「望むところだ」

 食堂へ入ると、五虎退と前田藤四郎が同田貫正国に飛びつかんばかりの勢いで駆け寄った――否、五虎退は本当に飛びついた。続いてわっと皆が集まってきた。それもそのはず、同田貫正国は昨夜帰還したところだ。
 おかえりなさい、と。それから気遣う言葉や旅のことを尋ねる言葉。
「待て待て、ああ、元気だったぜ、お前らも元気だな! 色んなところに行ったぜ。あ? これは手合せしようと思ってだなぁ、そうだよ朝からだよ」
 その喧騒に紛れて、燭台切光忠が耳打ちしてきた。
「今日のお昼、歌仙くんにサプライズがあるから、食堂ではなく広間に連れてきてくれるかい? あと、厨房には入れないで欲しいんだ」
 ああ、と同田貫正国は察する。
「あいつらまだ喧嘩してんのか?」
 歌仙兼定と大倶利伽羅だ。燭台切光忠は、うん、と苦笑する。
「落としどころがあれば、解決すると思うんだよね」
「分かった」
「帰ってきて早々、ごめんね。よろしく」
「いや、あんたこそ大丈夫か? 出陣続きだったんだろ?」
 僕? と燭台切光忠は笑う。
「僕は大丈夫だよ! こういうの、嫌いじゃないしね。…なんだか安心したよ」
「あ?」
「君の良いところは変わらないままだった」
 同田貫正国は怪訝に思う。
「そりゃあ、強くなるために修行に出たんだから、弱くなるこたぁねえよ」
 あはは、と燭台切光忠。
「そうだね。じゃ、お願いね!」
 喧騒が収まって、ようやく朝飯だ、と、一緒にいたはずの歌仙兼定を探す。
 こっちだよ、と招かれて見れば、バランス良くよそわれた朝飯が同田貫正国を待っていた。基本的に自分の分は自分で取りに行くのだが、歌仙兼定がよそってくれたようだ。おお、わりいな、と座ると、味噌汁のいい匂いがした。
「やっぱ飯はうちが一番だな」
 修行で食の好みに変化はなかったようだ。

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