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17日ふたつめ。

ええ、ふたつめです。


続きから、刀剣乱舞二次創作。注意書きは、小話一覧や、前記事(前編)にあるので省略します。

短刀はこの後編のほうが、よく喋ってるかもです。

※追記
薬研ニキの長ゼリフに兄貴みが足りないと餅草に指摘頂いたので直してるかもしれません。分かんねえ…分かんねえよ…。

◆洋菓子の始まり2


 木の実のパウンドケーキ。生クリーム添え。飽きてきたなら主おすすめのメープルシロップをかけて。
 今回は洋風に、紅茶を。
 テーブルには上品に花も飾り、これまでほとんど使ってこなかった小さなフォークを出して、9振のための食事テーブルはアフタヌーンティーを楽しむための洒落たものとなった。
「~~~! かわいい! いい匂い!」
 乱が口元に手を当てて目を丸くすれば、
「すごい! 歌仙さんが作ったんですか?」
 堀川が思わず笑顔で感嘆する。
「同田貫にも手伝ってもらってね」
「俺は何もしてねえよ」
 答える間にもやいのやいのと短刀たち。
「洋菓子も作れるんですね! すごいなあ」
「きれい…」
「とっても美味しそうですね…!」
「いい感じじゃねえか」
「歌仙さん、新しく作り方を覚えたんですか?」
 前田藤四郎に尋ねられると、歌仙兼定は少し歯切れ悪く、しかし頷いた。
「主に教えてもらってね。その…みんなの歓迎会を、していなかっただろう? 今更なんだが…」
 はは、と薬研藤四郎。
「忙しかったもんな。そんなこと俺も気にしてなかったぜ」
「歓迎会じゃなくても、毎日美味しいご飯が食べられて、僕、とっても幸せですよ!」
 秋田藤四郎の言葉に、五虎退も頷く。
「毎日ありがとうございます、歌仙さん。同田貫さんも。前田も。ぼくは、料理は少ししか手伝えないから…」
「そんなことはない! 僕はいつも助けてもらっている」
 口々に言われて、歌仙兼定はついムキになって言い返した。皆の視線を一身に受けて、あ、と言って歌仙兼定は穏やかに話し始めた。
「僕は…皆にきちんと伝えたいと思ってね。先日、乱と堀川がもてなしてくれた時、僕は本当に嬉しかったんだ。そして、僕はこの本丸に来てくれた仲間たちに、きちんと伝えていないと気がついた」
 歌仙兼定は居住まいを正して座り、皆を見渡して両手をついた。
「前田藤四郎。五虎退。同田貫正国。薬研藤四郎。小夜左文字。秋田藤四郎。乱藤四郎。堀川国広。よくこの本丸に来てくれた。ありがとう。どうかこれからも、よろしくお願い申し上げる」
 歌仙兼定は丁寧に頭を下げた。出来ることはこれくらいだが、感謝のほんの欠片でも伝わればいい、と。
 ふ、と誰かが笑った。それを皮切りに、くすくすと誰かが笑い、そしてすぐに皆の笑い声が部屋に満ちた。
「な…なんだい? どうして皆、笑っているんだい?」
 顔を上げてぽかんとした歌仙兼定に、だって、と乱藤四郎。
「なんだか…おかしくて」
 心の底からの、しかし優しい笑い声はやがて収まる。
「歌仙さん、僕だって、同じですよ。僕のほうこそ、よろしくお願い致します。末永く、共に主君にお仕えしましょう」
 前田藤四郎は歌仙兼定の前に座って大真面目に応えた。
 ったく、と薬研藤四郎が笑った。
「固いな。誰か来るたび毎回それやんのか? まあ、すごく伝わってはきたけどよ。けどさ、俺はこの本丸に来たとき、歌仙が笑顔で自己紹介して、よろしくって言ってくれたの、嬉しかったんだぜ? それで充分だった。いい本丸に来れたな、って安心したよ」
「ぼ、ぼくも」
 五虎退が続いた。
「あの…歌仙さんと、前田がいて、本当に、よかったです。その…笑って、よろしく、って言ってくれるだけで、ぼくは本当にほっとしたんです。だからぼくも、これから来る刀には、そうやって挨拶しようって思いました。それで…」
「おお」
 同田貫正国が何か思い出したとばかりに声を上げた。
「で、おまえの次に来たのが、俺だったわけか。すげえびびってんのに、俺んとこ来て挨拶していったもんなぁ」
「あ、あ、あの…すみません…今は、怖くないです。同田貫さんは、優しいです」
 にこっと笑われて、同田貫正国はおう、とだけ返事をして後ろ頭を掻いた。
「僕もですよ、歌仙さん」
 秋田藤四郎が空色の瞳で優しく微笑んだ。
「之定は、頑張ってるよ」
 小夜左文字も、微笑みはないが、彼にしては穏やかな表情だ。
「ねえ、ボク、そろそろ食べたいな。せっかく温かいお茶もあるし」
 乱藤四郎は歌仙兼定に微笑んで、既に座っていた同田貫正国の隣へ座った。
 堀川国広も、そうですね、と笑う。
「歌仙さんも」
「行きましょう!」
 前田藤四郎に手を引かれて、歌仙兼定はふうわりと笑った。
「ありがとう。みんな、これからも、よろしく」
 思い思いの返事に、いただきますの声が被さった。



「同田貫」
 遠征帰り、夕暮れ時。解散し、各々戦装束を解きに帰る。歌仙兼定は同田貫正国を呼び止めた。
「あ?」
 適当な返事と共に振り返った同田貫正国。歌仙兼定の藤色の髪が微風に揺れ、微笑んで細くなった青緑の瞳に夕陽の光が差す。
「いつもありがとう」
 何事かと、同田貫正国はしばし考える。その少しの間の後、歌仙兼定は、彼らしく少々高飛車な態度で付け足した。
「君には特に世話になっているからね。…この前の歓迎会の時は、手伝ってもらったし。…その…助かっているよ。君はよく気が付くし、大抵のことは羽目を外さずにきっちりこなせる。気苦労をかけているんじゃないかと、心配になることもある…」
 次第に、ごまかしであった大きな態度はしぼんでいく。同田貫正国は、ため息混じりに言った。
「めんどくせえ奴だな。ご苦労なこった」
「なっ…」
「俺はなーんも悩んじゃいねえよ。心配なのは、戦に出れるかどうかってことくらいだ。敵を斬ることしか考えてねえよ。あとはそん時そん時でどうにかしてるだけだ」
 同田貫正国は、いつも通り、素っ気ない。本当に何も気にしていないふうだ。
「俺のことで悩まなくていいぜ。これでひとつ心配事が減ったか?」
 ぽかんとしていた歌仙兼定は、諦めたように笑った。
「君は、本当に…。…脳筋で悩みがなくていいねえ」
 同田貫正国も二ヤッと笑う。
「力馬鹿はお互い様だろ」
「ち、力馬鹿とはなんだ! 僕は文系の…」
「あー文系文系。料理もうまいしな」
「馬鹿にしてるだろ」
「まあ、そんな感じで力抜いていけよ、これからまだまだ刀剣が来るんだろ? 9振でそんなに悩んでたらもたねえぞ」
 急にそう言われて、若干誤魔化されたような、と思いつつも歌仙兼定は頷いた。なぜこんなに素直に、的確に、同田貫正国は言葉を発せられるのだろうかと思いながら。
「そうだな…。これからもよろしく頼むよ、同田貫」
「ま、やれることはやるよ」
 ひらひらと手を振って、同田貫正国は自室へ帰っていく。歌仙兼定はその背中と夕陽を眺め、しばし風に優しく揺れる木の葉の音を聴いていた。
「風流だねえ…」
 歌仙兼定は微笑んだ。自室に帰って、詩(うた)を詠むため筆を取るとしよう。

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