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前記事のおはなし(二次創作・刀剣乱舞)の、おまけ。
小話集。260~1450字×7本。

*まいはし。(ほのぼのギャグ)
(大包平・鶯丸 + 乱)300字

*山姥切長義は外套を貰った。(ほのぼのだけど真面目)
 (長義・小竜 + 空気の読めるモブ光忠・モブ大般若)600字

*へし切長谷部はTシャツを貰った。(ほのぼのギャグめ)
(長谷部 +想像上の宗三)780字

*歌仙兼定は同田貫正国の部隊で出陣した。(シリアスめ)
 (歌仙(通常~極)・三日月・同田貫)1450字
 ! 同田貫正国(極)白刃戦開始台詞バレがあります。

*こんのすけは油揚げを貰った。(ほのぼのギャグめ)
 (審神者視点、こんのすけ)260字

*山姥切国広は紫のビオラを貰った。(シリアスめ)
(山姥切国広・山姥切長義)1300字
 ※「山姥切長義は外套を貰った。」とつながっています。)

*来派の部屋に大きなクッションが現れた。(ほのぼの)
 (明石・愛染・蛍)270字




*まいはし。

 72振それぞれの紋、色。
「可愛い! ピンクできらきらしてる! 見てよ、ボクの、マイ箸!」
 貰った時に乱藤四郎が叫んだので、”まい箸”と皆が言い出した。
「まい…”舞箸”? 歌仙らしいな。しかし、普通の箸とどう違うのだろうか」
 鶯丸が首をかしげると、大包平が迷回答する。
「舞うというからには、飛ぶのではないか?」
「なるほど! ならば気をつけなくては。大包平、熱いものを食べている時に飛んでいかれないようにするんだぞ、火傷するかもしれない」
「そ…そうか…! 見た目には綺麗だが…ああ、食事のときまで注意力を養えという歌仙の計らいなのか…!?」
 誰も突っ込まずに聞いていたので、翌日まで大包平はとても真剣な表情で食事に臨むこととなった。


*山姥切長義は外套を貰った。

「なあ、もしかして俺のマントを着てみたかったのかい?」
 貰った物を広げてみれば、外套が出てきた。広げてみれば、黒にちかい灰色に、金の線、和柄が上品にシンプルにあしらわれ、裏地は蒼く、静かに灯を映す夜の川と、仄かに蒼い空とを閉じ込めたような…街でつい、見入ったことがある品。
「言ってくれたら貸してあげたのに」
「…遠慮する」
 外套を眺めながら小竜景光に気のない返事をした。
 違うのか、と、少々寂しそうに小竜景光は引き下がった。
 気遣いはありがたいが、見当違いかな――山姥切長義はぼんやり思いながら、まだ、じっと外套を眺めていた。
 これは、きっと、似合う。
 こういうのが、相応しい。
 常にこっちにしろと言ってやりたいが――…。
 唐突に、山姥切長義は、我に返った。外套を畳みながら慌てる気持ちを抑えて何気なく同室の彼らを見る。
 燭台切光忠と大般若長光はそれぞれあらぬ方向を見ている。 小竜景光とは、目があった。にこっと笑いかけられる。
「よく似合いそうだね」
 山姥切長義はどきりとした。
「…さあ、どうかな」
「着てみないのかい?」
 え、と、小竜景光を見やる。ん? と首を傾げられた。
 それはそうだ。山姥切長義への贈り物なのだから。それは、当然、山姥切長義に似合うだろうという、そういう意味だろう。
「…まあ、また今度にしようかな」
「ふうん。君は意外と、シャイなんだね」
「…」
 もう、そういうことでいい。
 問題は、これを、どうやって…――。


*へし切長谷部はTシャツを貰った。
 
 主 命
 
 シンプルの極みだった。白いTシャツにはでかでかとその二文字が、力強い筆の字体で記してあった。
 少しでも感動した自分が馬鹿だったと、へし切長谷部は無言でそのTシャツを見据えた。宗三左文字にでも見られたら大笑いされるに間違いない――貴方なんですかそのTシャツ、絶対似合います、むしろ貴方以外似合わないですから、ちょっと今着てみてくださいよ、とか何とか言われるのが想像出来すぎて腹が立った。
 着ない。絶対着ないぞ。
 へし切長谷部は心に決めた。そしてこのTシャツが、歌仙兼定と同田貫正国どちらの選択なのか考えた。
 正直、どちらも想像しにくい。なんだかんだであいつらは真面目だ。特に歌仙兼定は、気にしすぎる節がある――他本丸の歌仙兼定の中でも、特に…言ってしまえば、人間臭いというか、女々しいというか。それが長所にもなっているのだが。
 かといって同田貫正国が、そもそも衣類を選ぶなんて、想像出来ない。選ぶとしたら武器防具、戦関連の道具、動きやすい――…動きやすい服。
「…同田貫か」
 しかし、動きやすいという理由に、悪意はないように思えた。確かに自分は主命を最も重んじていて主に忠義を尽くしていて、ゆえに「主命」と口にする機会も多いから、それが衣類に頓着の無い同田貫正国の選定基準になっても仕方が無いだろう。
 捨てずには、おいてやるか…。
 畳み直して、箪笥に仕舞った。
 …閉じれなかった。
 
 主 命

 主命。これが箪笥の肥やしになるなんて。
 しかし、ただの、Tシャツの、文字だというのに。
 どうすれば。
 例えこれが主からのものではないとしても、主命を蔑ろにすることに、言いようのない気持ち悪さを感じる。
 しかし着るわけには。
 待てよ、寝巻きなら誰の目にもつかないのではないか。流石に出陣時は、不測の事態もあるから身に付けるわけにいかないが。
 夜間、主命を着る。もちろん通常の寝巻きの下に。日中は、主命を、果たす。
 目の前がぱっと開けて明るくなった気がした。


*歌仙兼定は同田貫正国の部隊で出陣した。

 まだ、本丸を立ち上げたばかりの頃だった。主の知り合いだった審神者が亡くなった。始まったばかりの本丸で、終わりの気配を感じた。
 刀剣が12振を超えた頃、2部隊編成となり、同田貫正国は別部隊になることがあった。ほとんどが短刀。脇差は堀川国広のみ。打刀は、歌仙兼定と同田貫正国、和泉守兼定。太刀、山伏国広。ただし、山伏国広の練度が最も低かった。
 いざという時には最も丈夫なものが、隊員を守るだろう。それが一番、全員で帰ることに繋がる。
「同田貫。君も大事な戦力なんだから、あまり無茶な戦い方をしないでおくれよ」
「あ? そりゃ、あんたもだろ。力押しばっかすんなよ」
 ――そうじゃないんだ。そうじゃなくて。
 独りよがりなもどかしさがあったことを、覚えている。
 それからまたいつか同じようなことを言ったのだ。すると同田貫正国は、不安を見透かしたのかこう言った。
「俺を何だと思ってんだ」
「…」
「じゃああんたは折れるのかよ?」
「…誰に言っている」
「だろ?」
 ――そうなんだが、そうじゃないんだ。
 何も言えなくなると、同田貫正国はため息をついた。
「俺たちゃ武器だぜ? 戦で散るなら、本望よ」
「…そ、」
「折れねえけどな」
 にやりと、同田貫正国は笑った。
「俺はまだまだ、暴れ足りねえ。心配すんな。あんたも存分に暴れろよ」

 本当に、独りよがりに余計なことばかり考えたものだ。刀がこんなことで不安になるなんて、主の心配性がうつったのではなかろうかと、こればかりは主のせいにしたい。

 杞憂は杞憂のまま。その場凌ぎで乗り越えていった。
 折れず、曲がらず、誰も欠けることなく、本丸は、大所帯になっていった。

 三日月宗近は53振目だった。
 三日月宗近は自身をじじいだと言う。良い意味で、それは合っていると感じた。三日月宗近は、聴くことに長け、大事なことを話す時には無駄がなかった。
「形あるものはいつか壊れるもの。まあ、それは今ではないがな」
 話してみれば、飄々とそう返ってきた。
 人間はいつか死ぬ。我らはいつか折れる。戦は、いつか終わる。そして新たな時がやってくる。花が、咲いて枯れ、新たに芽吹くように。日と月とが巡るように。
 あの歴史の先に、我らが在るように。
「では、形無きものはどうですか?」
 ふと言葉にしてみると、三日月宗近は、微笑んだ。
「ん? 歌仙なら、知っているだろう?」
 夜空のような瞳が、楽しそうに見つめてきた。
 日が変わっても、晴れない不安があった。
 月が過ぎてなお、曲がらない信念があった。
 時を超えて今、物語は継がれ、我らは此処に在った。
 象られたこの身体の内に燃える、刀と人間の間の、形無き、心というもの。遥か遠い時代の、あの歴史に生きた人々の思いの先にこそ。
 我らに宿る魂とも言える信念と、存在するということを切り離すことなど、出来るはずもない。つまるところ、我らは、我らであるしか無く、我らである限り、折れないし曲がりもしない。
 知っていたはずなのに。
 ふ、と、笑って呟いた。
「折れず、曲がらず」
「うむ、それが其方の答えか」
 三日月宗近は楽しそうに言うと、よきかな、よきかな、と笑った。
「貴方の答えは、聞かせてくれないのですか?」
「そうだなぁ。はっはっは」
 たまに主が冗談で愛をこめて言う(本人談)言葉が脳裏を掠めていった――食えないクソジジイですね。頼りにしていますよ。


 久方振りに同部隊になれば、聴き慣れたはずの掛け声がまた、一段と真直に感じられるのだ。
「行くぜ! 戦で暴れてこそ武器の華だ!」
 ああ、爽快だ。戦場に咲け、刃よ、閃け、血よ、舞い散れ、命よ、燃えろ。
 例え戦場に散ろうとも、刃が、時が、この身を滅ぼそうとも、我らは決して、折れぬのだ。


*こんのすけは油揚げを貰った。

 ずっと上機嫌に笑っていて、鼻歌さえ出ているので、そんなに先日の一周年の宴を、こんのすけも楽しんでくれたのかと、審神者は尋ねた。
「ええ、ええ、審神者様! こんのすけはとても、とても、感動致しました! 私もしっかり務めを果たし、審神者様や刀剣男士たちを支えていこうと、心新たに思いました!」
 そうかそうかと改めて嬉しくなってしみじみ頷く。こんのすけは幸せそうに、さらにこう言った。
「あんなに美味しい油揚げがあるなんて、感動致しました! 頂いてしまったからには、頑張るしかありませぬ!」
 そっかうんよろしくねと、審神者は微笑んだ。


*山姥切国広は紫のビオラを貰った。

 はーばりうむ、というらしい。スリムな硝子のボトルに、雪のような白い花、その合間にぱっと冴える紫のビオラ。偶然見ていた鯰尾藤四郎と骨喰藤四郎が教えてくれた。
「わあ! 綺麗ですね…!」
「…紫のビオラは…」
「揺るぎない魂!」
 二人が交互に言うので何のことかと思えば、花言葉だそうだ。

「揺るぎない魂…」

 花言葉と、その色合いと。部屋でひとり、それを見ていると、どうしても、動かずにはいられなかった。
 硝子瓶のビオラを手に、会いたくはないだろうが会うべきだと思うやつの部屋へ向かった。
 あと数歩で部屋の前、というところで、足が動かなくなった。
 ――これを持って行ってどうする。拒絶されて終わりだろう。…しかしこれは俺ではなく、あいつにこそ…。
 さっと襖が開いた。
 動く前に、部屋の主がなにやら包を持って出てきた。二歩こちらへ歩んだところで、はた、と目が合い、立ち止まる。冷えた眼差しを向けたまま、山姥切長義が、山姥切国広に問いかけた。
「何をしているのかな、偽物くん」
 訪ねてきたはずなのに、気が引けて、視線を落とした。べつに、と言おうとすると、紫のビオラが鮮やかにそれを引き止めた――揺るぎない…。
 目を上げるとまだ山姥切長義がそこにいた。ビオラのハーバリウムを、ぐっと差し出した。
「これを貰ったが、あんたにこそ必要だと思ったから持ってきた」
「…は?」
「花言葉は、揺るぎない魂、だそうだ。あんたに持っていて欲しい。山姥切」
 不快かつ怪訝そうな表情で、山姥切長義は意図を探るように写しを見る。
「俺が揺らいでいるとでも言いたいのかな?」
「そ、そうじゃない! ただ…」
「どういうつもりか知らないが」
 やはり不快感を顕にした低い声で本歌が言う。山姥切国広は真直に本歌を見たままで、無意識に唾を飲んだ。
「偽物くんに心配されるようなことは何もない。何一つ。ここに来るのが遅かったからといって、本歌の俺が他のものに遅れを取ることなど、絶対にない。根暗で小汚い偽物くんの出る幕なんて無くなってしまうかもな」
 嫌悪や、憎しみすら、感じ取れる。山姥切国広は、また視線を落としかけて、留まった。嫌悪の間に、微かな必死さを、感じた気がしたのだ。
 山姥切長義は、67振目だ。
 来て間もないと言ってもいい。山姥切国広は、主の刀であるということに救われながらここまできた。だがこの新しく顕現した刀は、どれだけそれを感じて、救われることができるだろう。まだ、無理なのではないか…。
「山姥切。俺は、あんたの写しだから…俺が誰よりも、あんたが本歌の山姥切だと知っている。それにあんただって、主の刀だ」
 山姥切長義の視線がわずかに揺れた。が、そんなことは無かったかのように、写しを睨みつけてくる。
「…はっ。そんなことを言うのならなおさら、身なりも何もかも見直したらどうかな。まずはその薄汚い布だ。それに服の破れくらい自分で繕え。他人を馬鹿にしているとしか思えない格好だ。自分の負う名前を忘れるほどの出来損ないでないのなら、例えば、これくらいは!」
 持っていた包を、山姥切長義が思い切り投げつけてきた。中身は柔らかい布のようだが、両手でハーバリウムを持っていた山姥切国広は顔面で受け止めた。それなりにバシッと痛い音が鳴る。
「身につけ、着こなしてみせろよ。おまえのその格好、視界に入るたびに不愉快だ」
 ぱたり、と包が落ちた時には、山姥切長義が自室の襖をピシャリと締めるところだった。


*来派の部屋に大きなクッションが現れた。

 もちろん明石国行はしょっちゅうクッションと同化していた。クッションと同化している時間は幸せだったが、それよりもずっと幸せな時があった。
 あの日の翌日届けられたクッションは、ふにふにもちもちしたビーズクッションで、愛染国俊と蛍丸が一緒に埋もれることができた。
 今まさに、そうなっていた。
 右に蛍丸。左に愛染国俊。幸せそうな顔をして、昼寝をしている。もうすぐおやつの時間だが、明石国行はクッションに埋もれるふたりの前に腰を下ろして、柔らかいため息をついた。

 3振があまり幸せそうに寝ていて誰も起こしてくれず、おやつを食べ損ねたことにがっかりするのは約2時間後。

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