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ふたつめです。
ひとつめ記事にて、お返事をさせていただきました。
ありがとうございますヽ(´v`*)ノ



では早速…。

つづきから、刀剣乱舞二次創作です。
前回は歌仙出ませんでしたが、今回は、前回のやつと同時期の歌仙のことです。

譲れないキャラ像がある方は読まないでください。
基本一発書きです。



◆ぴったりの余分
(歌仙兼定・同田貫正国・宗三左文字() + 堀川国広)
 ※前回「虎徹の弟、左文字の兄」(旧:猫亀二刀開眼)の歌仙視点版っぽいものです。



 歌仙兼定、燭台切光忠をはじめ、料理の出来るひと振りがほとんど必ず厨の番の一員になる。
 春、その日は歌仙兼定、鶴丸国永、堀川国広、平野藤四郎が厨の番だった。

 長曽祢虎徹、浦島虎徹は顕現したばかりで、安全に、効率よく経験を積むことができる合戦場へ出陣続きだ。その前に顕現しもう少しでこの本丸のレベルに追いつく南泉一文字、千子村正も共に出陣している。審神者の采配で、打刀で唯一修行をしてきた宗三左文字もだ。
 練度は決して低くない蜂須賀虎徹もまた、共に出陣している。
「なんだぁ? また心配事か」
 賑わう前の食堂。
 厨当番ではない同田貫正国が、大鍋から豚汁をよそいながら声をかけた。調理と片付けは当番が行うが、配膳は行われない。自分の分は自分で取る方式だ。厨当番は、皆が食べ始めたら食べ始め、そして片付けに取り掛かり始める。全員が食べ終え、片付け終われば当番終了だ。出陣とは違った種類の重労働である。
「同田貫」
 先によそい終わっていた歌仙兼定は、同田貫正国の器を見るまでもなく言った。
「肉ばかり取るんじゃない」
「多めに入れてくれてんだろ?」
「今の僕の心配は、君が肉を取り尽くさないかということだよ」
「いいじゃねえか。取り尽くせねえよ。遠征のやつらの分だって、もう取ってあるんだろ? 心配いらねえよ」
「それとこれとは別だ。バランス良く作ってるんだから、バランス良く取ってくれよ」
「ったく。しょうがねえなぁ」
 打刀二振目として顕現した同田貫正国は、歌仙兼定ともかなり長い付き合いになる。おかげで料理もそこそこするようになり、多少作る側の気持ちも分かっていた。それゆえ、作り手に、それも歌仙兼定に”バランス良く作ってるんだから”と言われては、従う他ない。
 二振、テーブルに着いて、いただきます、と食べ始める。
「んで? 今度は何をひっつめてんだ? 虎徹か?」
 同田貫正国が早速肉を頬張りながら尋ねた。あまりに単刀直入だ。歌仙兼定もあっさり頷いた。
「蜂須賀は以前から贋作に対して厳しい言動があった。それにしても長曽祢が来てからの態度はどうだろう。長曽祢が反撃しないから悪化していないが…浦島や、共に出陣する者に同情せざるを得ない」
「まあなぁ。俺は戦に支障さえなけりゃ、勝手にやりあってればいいと思うけどさ」
 同田貫正国は蓮根と厚揚げの炒め物を頬張って、お、と表情を変える。
「うめえ。変わった味だな。醤油じゃねえな」
「オイスターソースとマヨネーズだよ」
「へえ。胡麻うめえ」
「にんにくも少し入ってる。下手に蜂須賀に言ったところで、あれはそう簡単に曲がらないだろう」
「多分な。おまえが悩んでも仕方ねえことなんじゃねえの?」
「…そうかもしれない」
 抱え込まずに他に任せること――歌仙兼定が今日までに学んだことのひとつだ。しかしこれがなかなか、難しい。放っておくわけにもいかず、少なくとも心に留めておかねばならない。誰かがいつの間にか勝手に解決するだろうと放置するわけには、いかない。解決しなかったとき、この本丸に悪影響が出うるのだから。
「長曽祢は喧嘩買ってねえし、蜂須賀も、長曽祢のこと以外はなんともねえし、大事にはならねえと思うぜ、俺は。ま、いざとなったら俺がぶっ飛ばしてやるよ。蜂須賀も長曽祢もさぁ」
「頼りにしているよ。でも、ぶっ飛ばす時は僕も混ぜてくれ」
 同田貫正国はにやりと笑った。歌仙兼定という刀、意外と最終手段は力任せなのだ。
「いいのか? 雅じゃねえなあ」
「ぶっ飛ばさなくて済むように、僕に出来ることがないか考えるよ。ところで君はいつから雅を解するようになったんだい?」
「さあな。明日からじゃねえの?」
 ふ、と歌仙兼定は笑った。


 料理当番以外は食堂を去っていった。
 虎徹の兄たちは連日空気を張り詰めさせていたが、今日はいつもと違った緊張感を纏っていた。浦島虎徹を挟んで、無理して場を和やかにしようとし、ギクシャクしているような雰囲気だ。ともに出陣していたはずの浦島虎徹や千子村正より遅れて食堂にやってきたようだが、何かあったのかもしれない。
 遠征組が帰ってきたのは食堂が静かになって間もなくのことだった。
 あれ、と、配膳していた堀川国広が首をかしげる。
「歌仙さん、一振分多くないですか?」
「ああ、堀川、それでいい。七振分でいいはずだ」
 堀川国広は不思議に思いながら、遠征メンバーを思い浮かべる。たしかに六振だ。この本丸では、遠征も出陣も基本的に六振一部隊、今日も例外はない。
 まず食堂にやって来たのは四振。
 それから遅れて、やってきた。遠征に出ていた江雪左文字と小夜左文字、それから、今日も出陣組だった宗三左文字。
 あ、と堀川国広は歌仙兼定を見やる。左文字三兄弟を優しい眼差しで見ていた歌仙兼定は、堀川国広の視線に気がついて微笑んだ。
「今日は、こうなる気がしてね」
 食事を受け取りに来た左文字たち。歌仙兼定に一振分の夕食を乗せた盆を渡されて、宗三左文字は目をぱちくりした。
「なぜ、分かったんです? 言わずに来てしまったから、貴方を怒らせるだろうと覚悟していたのですが」
「さあ、僕は計算ごとは苦手でね。でも君がそろそろ、兄弟そろって食事をしたくなる頃のような気がしたんだ」
 差し出された盆を受け取りながら、驚いていた宗三左文字は、敵いませんねえ、と笑った。
「ありがとうございます。風流を愛するだけあって、そういう些細な気配にも敏いのでしょうかねえ」
 歌仙兼定は思わぬ褒め言葉に目をそらした。
「どうだろう。そうだといいのだけれどね」
「おや。貴方にしては謙虚ですね、照れてます?」
「っ、そういうわけでは、ない。ほら、冷めないうちに、早く食べてくれ」
「はいはい。いただきます」
 ああそれから、と宗三左文字。背中を向けかけていたが、振り返ってにっこりと歌仙兼定に報告する。
「蜂須賀と長曽祢には僕からひとつ物申しました。万一、これで変化がなければ貴方に頼るかもしれません」
 おや、と歌仙兼定。ほっとして、雅から掛け離れたことを口走った。
「先にぶっ飛ばしてくれたのか」
「ぶっ飛ば…まあ、ある意味そうですね、ええ、ぶっ飛ばしました」
「ありがとう。…きっと、君の言葉はよく効くだろう」
「いいえ。僕も、見ていられませんでしたから…兄として」
 そう言って背中を向けた宗三左文字は、小夜左文字の兄としての一振だった。ふと歌仙兼定の脳裏に、宗三左文字が自らよく口にする“魔王の刀”という言葉が過る――今、この時は、“そう”ではない気がしたのだ。
「ぴったりでしたね」
 堀川国広の声で、歌仙兼定は我に返った。何のことかと考えていると、堀川国広は笑って付け足した。
「一振余分かと思いましたけど、七振でぴったりでした」
 ああ、と歌仙兼定は笑い返す。
 余分に取っておいたのは、虎徹兄弟を見続けた宗三左文字がそろそろ、左文字兄弟で過ごしたくなるような、そんな気配が漂っていたからだ。
 つまり、正直なところ、明確な根拠はなかった。強いて言えば勘だ。だから食事が余ったら遠征組に分配するつもりでいたのだが…まあ、あえて言う必要はないだろう。

 よく見ていなければ働かない勘であることに、歌仙兼定自身は気がつかない。

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