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前記事の続きです。
刀剣乱舞二次創作です。
注意書きはこちらには書きませんよ~

◆出来ない和解・殴り合い理解・じゃあ、まあ、茶会(2)


「おい、酷い顔してるぜ。メシがまずかったか?」
 今日に限ってよく誰かに会う、と蜂須賀虎徹はため息をつきたくなった。
「同田貫…手合せに行く途中か」
「おう。嫌いなもんがあるなら歌仙と燭台切には言っとけよ。あいつらは、疲れてる日に嫌いなもんださないようにしてくれるぜ。畑仕事の時とか」
 歌仙兼定が、言葉を失って見つめたあの表情が脳裏をよぎった。あの優しい刀はきっと落ち込むだろう。蜂須賀虎徹はため息をついた。
 なんのため息かと思いながら同田貫は、とりあえず、一番に思いついたことを口にする。
「怒ってばっかりも疲れんだろ? 無理すんなよ」
 二振目の打刀も、一振目の打刀と同じように心配するのだなと、蜂須賀虎徹は不思議に思った。歌仙兼定と同田貫正国。一見すれば全く相容れない二振だというのに。
 詳しく話す気力もなく、蜂須賀虎徹はただ一言。
「…すまない」
「あ?」
 同田貫正国はぞわわっ、と鳥肌が立つのを感じた。蜂須賀虎徹が突然しおらしくなったのが気味悪かったのだ。
「大丈夫か? らしくねえぞ」
「…歌仙に当たってしまった。落ち込んでいるだろうから、すまないが、どうにかしてやってほしい」
「はあ? まあ、どうにでもするけどさぁ…」
 同田貫正国が応じると、そのまま、蜂須賀虎徹は自室へ戻ろうとする。その背中を突然、同田貫正国は力強く叩いた。スパーン…というより、ドゴッ! と。
「っ…!? ぐ、っげほ、げほ」
 背後からの不意打ちに、蜂須賀虎徹は息を詰まらせ、咳き込んだ。壁に片手を付いて背を丸めた蜂須賀虎徹に、同田貫正国は大して悪びれる様子もない。
「おお、わりぃわりぃ。らしくねぇんで叩き直したわ」
 生理的に滲んだ涙をそのままに蜂須賀虎徹がまだ咳き込みながら同田貫正国を軽く睨む。
「戦の時みたいになんもかんも跳ね飛ばしちまえよ。怒ってばっかで、それを我慢するんだから余計疲れてんだろ? それで余計イラつくんだ。だったらもう我慢なんかやめちまえよ」
 浦島虎徹のために。部隊の雰囲気のために。だから我慢してきたことを、あっさりと、やめてしまえと言われて蜂須賀虎徹は戸惑った。
「しかし…」
「贋作贋作真作真作って、言わねえほうが不自然だよあんた。どうせみんな分かってんだろ。我慢してたってあんたが余計イラつくだけだ。それにあんたも長曽祢も少々ぶん殴ったくらいで壊れたりする玉じゃねえ。いいじゃねえか思う存分殴り合えば。あんたが殴ればあいつは躱すか殴り返すかするだろ」
「しかし、浦島が悲しむ」
「あー、浦島なあ…」
 ぽりぽりと頭を掻いて、同田貫正国はほんの一時考えた。
「けどさあ。上辺だけ繕ってもなあ。繕いきれてもねえし。それよか、やっぱ言葉だろうが拳だろうが、殴り合ったほうが、そのうちお互い分かってくるんじゃねーの。和解は出来なくても理解は出来るっつうか。そのほうが浦島も結局嬉しいんじゃねえ? 分かんねえけど。
どうだよ。ここまで〝殴り合って”きて何も分からなかったわけじゃねえだろ?」
「…」
 その通りだった。分かりたくもないことが分かってしまっている。贋作らしくちっぽけな刀であれば、どんなに楽だったか。
 蜂須賀虎徹が意図せず滲ませた辛さを感じ取って、同田貫正国は察する――蜂須賀虎徹は、分かっている。だから辛い。
「…あいつ、器でけえもんな。突っかかっていくこっちがちっぽけに思えちまうぜ」
 心の内を読まれた気がして、蜂須賀虎徹はふっと視線を上げた。驚いたせいだろうか、妙に冷静に、思ったことを口にする。
「あぁ…歌仙と君が、仲が良い理由が分かった気がするよ」
「はあ? 何の話だよ」
 怪訝な顔をした同田貫正国。蜂須賀虎徹はそんな彼を真っ直ぐ見据えたままで、言葉を紡ぐ。
「俺は贋作を許せない。許してはいけない。…、…」
 あっという間に言葉に詰まった。発せられる音を見つけられずに、空気だけが行き来する戸惑う唇。
 同田貫正国はしばし待った後に、普段通りの素っ気無さで言った。
「いいんじゃねえの」
 それから付け足した。
「ま、俺としちゃあ、戦の時に足手まといにならなきゃそれでいいよ」
 急に自分本位の意見が出てきた。蜂須賀虎徹はふと目が覚めた思いがした――同田貫正国に許しをもらってどうする。甘えすぎたようだ。
 蜂須賀虎徹はふと笑んだ。
「虎徹の真作たる俺が、足手まといになどなるものか。そういうことは贋作に言ってくれ」
「へっ。頼むぜ蜂須賀」
 そうして意気揚々と手合せ場へ向かう同田貫正国を、呼び止めてまた”しおらしく””らしくなく”礼を言うのも野暮に思えて、蜂須賀虎徹はただ見送った。
 踵を返して約5秒。
 やけに人に会う今日のトドメだった。廊下の曲がり角から長曽祢虎徹が現れた。これは何かの陰謀か。
「ふざけるな。どうしてここにいるんだ」
 じとっとした目で理不尽な八つ当たりをすると、長曽祢虎徹は少々呆れ気味に口をへの字にして応じる。
「手合せに向かう途中だが」
「別に答えが聞きたいわけじゃない」
「そうか。悪かったな」
 長曽祢虎徹はため息混じりに言いながら、蜂須賀虎徹の目の前から早く消えようとする。
「理由もなく謝るな。不愉快だ」
「…俺になにか用事か?」
 足を止めた長曽祢虎徹。蜂須賀虎徹は、別に何もない、と、立ち去ろうとする素振りを見せる。しかし一歩も行かぬまま、背を向けて言い放った。
「長曽祢虎徹。俺は絶対に贋作を認めない。…せいぜい、よく働け」
 キレるわけでなく、憎しみのようなものが込もっているわけでもなく。ただ、少々、気まずさというか、気恥ずかしさというか…妙な響きを、長曽祢虎徹は聴き取った。
「あ、ああ…」
 戸惑って返事をすると、蜂須賀虎徹は少し怒ったふうに言う。
「早く手合せに行ってやれ! 同田貫が待っている」
「ああ、そうする…蜂須賀、何かあった――」
「黙れ。俺に気遣いなど不要だ」
 その言い方に、長曽祢虎徹は、つい、唇の端を上げた――それはもちろん、「贋作の気遣いなんかいらない」という意味、なのだろうが。まるで「心配しないでくれ」とか「気遣い不要の仲だから」とか、そういうふうな表現ではないか。
「そうか。では、急いで向かうとしよう。じゃあな」
 長曽祢虎徹が立ち去っても、蜂須賀虎徹は立ち尽くしていた。
 長曽祢虎徹が笑ったことには、声で気がついたが。その直後、何か変なことを言ってしまったような気がしたのだ。
 自分が何と言ったか思い返す。深刻な表情でそれを吟味していくうちに、気がついた。
「貴様の気遣いなど不要だ」と言えば良かったものを――いや良くないが、しかしあの言い方では、まるで――。



「僕は、なんて浅はかだったんだ…」
「今度はなんだ?」
「蜂須賀が許せないのは、贋作以上に、自分自身だろうと、ようやく分かったんだ」
「はあ」
「蜂須賀は本当に深く思い悩んでいる。僕なんかでは到底思い至れないところまで、考えている。自分や長曽祢の立場、誇り。長曽祢の立派なところ。それを知っているが認められないこと…」
「なんだもう分かってんじゃねえか」
「今更、分かってもね…」
「んなもん、手がかりがなきゃ分かるわけねえだろうよ。つーか、蜂須賀の方も気にしてんじゃねーの、お前が落ち込むだろうって」
「…同田貫、君、蜂須賀と話したのかい?」

 遠征部隊の集合場所にて。
 歌仙兼定に尋ねられて、同田貫正国が答える前に、とぼとぼと前田藤四郎がやってきた。
 
「修行して、少しは強くなって…それなのに、仲間の気持ちに寄り添うことは、なんて難しいことなんでしょう…」
 ああ、蜂須賀虎徹のことだ、と歌仙兼定と同田貫正国は顔を見合わせた。
「もうお前、茶会でも開けよ。前田も蜂須賀も呼んでみんなまとめて解決しろよ」
「ああ、そうするよ」

 どうやら平和が訪れそうだ。



(おわり)

蜂須賀虎徹って、理解しようとしなければ全然分かんないけど、
なんていうか高度なツンデレすぎてというか←
根は真面目で優しくて天然さがちょっとあって、なんだか、
浅いと思って沼遊びしてたら急にずっぽり頭まで深みに沈む感じがあるような。

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