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えー、更新日になにやってんだ、という声が聞こえてきそうですね。

書こうとは思っていなかったんです。
でも書けちゃったんです(多分1~2時間程度で)。
書けちゃったもんは仕方ないですね。

二次創作です。

ま、こちらも楽しんでいただければと思います。刀剣乱舞ですが。基本的に歌仙中心ですが。
私もこれ書いて楽しく休憩出来ています。



◆その秋色より華やかな
(加州・安定・歌仙(極) + おまけにだけ微量の同田貫、審神者)
※注意 歌仙兼定(極)の台詞や、変化が推測出来てしまう表現があります。 




 畑、馬、手合せ。内番とはそれだけではない。炊事、洗濯、掃除、買い出し。
 大和守安定は、掃除当番だった。昼前になって部屋へ戻ると、部屋の襖を開けて陽光を取り込む部屋の中、完全非番の相棒が夢中で裁縫をしていた。
 主は裁縫はほぼ出来ないらしいが、常識と、基礎の本だけ加州清光に与えた。やがて刺繍のお手本や、毛糸を使った編み物の本も増え、服や小物への可愛いアレンジを自由に出来るそれが、いつの間にか加州清光の特技にすらなっていた。
 相棒の手にした秋色の布は、赤色の刺繍糸で洒落た柄を施され、完成すれば主の使うコースターになるらしい。昨日話した。
 華やかで可愛いコースターになるのだろうと分かるその布よりも、相棒の表情のほうがどこか華やいで嬉しそうだった。
「ただいま、清光。なんかいいことあったの?」
「お疲れ、安定。別にー」
 お疲れ、と一時目を上げたが、布と針がまだ糸で繋がっている手元へまた目を落とす。
 大和守安定は二人部屋の真ん中にひとつ置かれた机に肘をついて座ると、角をはさんですぐ隣で作業に没頭する加州清光をじーっと見据えた。
「…嘘。何隠してるんだよ。ずるいぞ」
「別に、隠してないって」
 少々驚いて加州清光は否定した。本当に隠すつもりはないようだ。
「何もないよ。歌仙のとこ行って話してきただけ」
 大和守安定は、きょとんとする。
「何を?」
「このコースターの柄。主はどれが好きかなって、相談に行ったんだ」
 でもさ、と加州清光は笑う。
「また俺、タイミング悪い時に行っちゃったんだよね。ちょうど、短冊と筆持っててさ」
 へー! と大和守安定は少し意地悪で楽しそうな笑みを浮かべた。
「おまえ、前もそれやって怒られたじゃん。大丈夫? 歌仙、怒ったんじゃない?」
 ううん、と加州清光は穏やかに首を横に振った。作りかけのコースターを左手に、針を右手に握ったまま、作業は一時中断だ。



「お邪魔しまーす。歌仙、相談があるんだけどさー、この中だったら、主どれが好きだと思う? これとこれはいいと思うんだけど…」
 夢中になっていた加州清光は、声をかけて部屋へ入って刺繍の手本の本を広げて、そこまでやってから気がついた。普段ならもっと周りが見えているのだが、うっかりしていた。
 歌仙兼定は短冊を前に、筆を持ち、恐らく今まさに、句を詠もうというところだったのだろう。
 加州清光が、この、詩人が邪魔されたくない瞬間に踏み入ってしまうのは二回目だった。だから凍りついた。以前やってしまったのはいつだったか…。歌仙兼定はぎゅっと目をつむって、畑仕事の時よりも不機嫌になって、あまりにも無粋だ、風流を解さない、などと怒り、加州清光を追い返したことがあった。あの時は、あとで謝って許してもらったが…。
 歌仙兼定は、基本的に穏やかで、優しい。時々力づくなところがあるが、それとバランスを取るかのように、気にしすぎる節もある。どうしても許せない、譲れない部分については、真っ直ぐで、時に怒ることだってある。怒ると怖い。だからというわけでもないが、加州清光は、歌仙兼定を怒らせたくない。
「あ、ごめん、歌仙、後でいいよ…邪魔、しちゃって…」
 歌仙兼定はゆったりと筆を置いた。
「まったく、君は」
 加州清光に向けた視線は、穏やかだった。少々呆れながら、ふっと笑う。
「どうしてこうも、折が悪いのだろうね」
「ごめん。また後で来るよ」
「いや、構わないよ、加州。どれだって?」
 歌仙兼定が座り直して体を真っ直ぐ本に向けて見始めたので、加州清光は、立ち上がりかけたのをやめた。
「これと、これと…」
「うん、うん、これよりは、こちらの方がいいな…」
 歌仙兼定は、本当に、怒っていないようだった。それでも加州清光は、なんだか居づらくて、再び謝った。
「歌仙、邪魔してごめん。ありがと」
 いいや、と歌仙兼定は首を振った。
「君は今すぐ、僕に聞きたかったのだろう? そうでなければ、加州清光ともあろう君が、盲目にはならないはずだ」
 う、と加州清光は目をそらす。それに、と歌仙兼定は続けた。
「僕がいつ句を詠もうとしているかなんて、誰にも分かるはずないだろう。ただただ折が悪かっただけだよ、まったく、不思議だね…言っておくが、責めているつもりはまったく無いんだから、落ち込まないでおくれよ」
 責められている気もしない言い方だった。ありがと、と、加州清光はようやく身の置き場を得たような気がした。
 刺繍の柄をどれにするか話し合って、さあ部屋へ戻って作業に取り掛かろうと加州清光が立ち上がると、歌仙兼定がふと真面目にこんなことを言う。
「前は、あんなに怒って悪かったね。君は笑っている方がいい。主は君の笑顔がお好きだ。もちろん僕もそうだし、皆もそうだと思うよ」
 一瞬ぽかんとした後、ぷ、と、加州清光は笑ってしまった。
「な、なんだい?」
「いや、そんなこと気にしてたんだ、って思ってさ。…俺は全然気にしてないよ。タイミング悪かっただけだけど、それでも、俺がずけずけ喋っちゃったのは悪かったし。歌仙が謝ることないよ」
「…そうかい」
 ふ、と歌仙兼定は笑う。気にしすぎる付喪神の、気がかりをひとつ減らせたようだ。
「やっぱ主のことは、歌仙に聞くのが一番だなー」
 羨望も込めて言うと、歌仙兼定は誇らしそうにする。
「当然だろう。悪いがそこは、誰にも譲れないからね」
「うーん。ま、俺も頑張って可愛くしてよっと」
 あ、と加州清光は部屋を出る前に思いついて、ひとつ、告げていく。
「歌仙って、最近、不機嫌な顔しなくなったでしょ。すっごく、いい感じだよ。それでますます主に愛されちゃって、ちょっと羨ましいくらい」
 突然心から嬉しくなったとき、この歌仙兼定は相変わらず、少し戸惑って笑みを抑える。
 加州清光はあんまり羨ましくなりすぎたので、去り際に一つ意地悪を置いていくことにした。
「でも戦ってる時とかその後とか、ちょっと怖いから気をつけなよー。じゃ、お邪魔しましたー」
 え、という声を背中で受け流して加州清光は部屋を出た。
「あーあ、意地悪しちゃった」
 呟いて笑う顔は、極々僅かな罪悪感がありつつも清々しい。



「歌仙は、怒ってなかったよ」
「…そうなんだ」
「うん。…なんか…変わった、かな」
 変わった? と、大和守安定は首をかしげた。
「うん、変わった。…修行してきてから、変わったんだろうな」
 ああ、そうだねと、大和守安定。
「たまに長谷部さんみたいなこと言うようになったよね」
「あぁ、それちょっと思ってた。主、命! みたいな」
「束縛系っていうか忠犬っていうか」
「ね。っていうかさ、戦績通達を恋文と間違えるって、どうなの」
「昔ならともかく、今時あんな無骨な恋文ないよね」
「ほんとほんと。もっと可愛い便箋使うって」
 ふざけあうようなやりとりは、不意に始まって不意に終結する。
「なんていうか、寛容に、なったよね」
 そうだね、と大和守安定は頷いた。加州清光よりいくらか早く、歌仙兼定ともいくらか長く、付き合いがある。畑仕事だって最近は楽しんでいる様子だ。前は嫌がっていたのに。
 あーあ、という言葉と裏腹に、加州清光は嬉しそうに笑った。
「俺、嫉妬してるや。けど…なんか、嬉しいんだ。分かんないけど」
 再び、秋色のコースターよりもずっと、表情が華やいだ。
 ねえ、と、加州清光は相棒に呼びかける。
「俺たちも、あんなふうに変われるのかな」
 変わる、と、大和守安定は繰り返す。
「変わる、か…。それで、沖田くんに近づけるなら、いいな…」
 前の主の名を呟いた相棒を、加州清光は否定も肯定もしない。思いはそれぞれにある。仕える主を間違えはしない。
 加州清光は秋色のコースターに目をやって微笑んだ。
「主は、歌仙のこと、もっともっと好きになったんだろうな…」
 主は修行をゆっくり進める。慎重に、慎重に。恐らく、戦力を考えながら、必要性を考えながら。だが必ず行かせてくれる、そう約束した。待たせて申し訳ないと、謝られた。修行の場を設けられているほぼ全員が、一度は修行に出ることをお願いに行き、分かりましたでも待ってください、と言われている。

 いつか俺も。
 華のように、蝶のように、より鮮やかに開き愛されるあの刀と並んで。




◆おわり。
(大和守安定は14、加州清光は22振目でした。

以下はおまけです。小話未満の余談。)


◆おまけ

 主に怖がられてるんじゃないかと心配になった歌仙兼定が、同田貫正国にその旨を相談したら、本人に聞けよと言われて、
主に、戦いの後怖いですかドン引きですか、などと尋ねた結果、

「別に全然気にしてないです。
首落ちて死ね! とかより全然怖くないし。
首落ちて死ね! とか言ってても、貴方たちは刀だから別に普通だと思うし
返り血はあまり浴びないほうがスマートかもしれないとは思うけど、戦闘経験ないから私なんとも言えないし、
鶴丸なんか多少返り血浴びたほうが鶴丸らしいし
結局気にしてないです」

 とのことで、歌仙兼定は安心したそうな。



(歌仙兼定と、歌仙兼定(極)の「つつきすぎボイス」の違いに悶えて一気書きしましたとさ。
 加州清光ってとても可愛いと思います。)

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