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「しっかり食べないと、勝てるもんも勝てないよ」
自覚はあまりなかったが、とても疲れていたと思う。食欲も出ないくらいに。
その宿のおばさんは、お節介にも、とにかく眠りたい僕にご飯を持ってきてくれた。ビスケットや干し肉、とにかく食えればいいと、保存食をかじりながらいくらか――契約者と悪魔と、その召喚物や、たどり着くまでに魔物とも――、戦って、数日間。
一段落した日、夕方だった。
乾燥したものじゃなくて、水じゃなくて、
調理したての湯気のたつ料理と、暖かいミルクだった(ハーフエルフは例外なく下戸だと、宿勤めなら知っていて然るべきだ)。
もう寝たいんだけど…と思いつつも、そろそろちょっとは食べないとまずいか、と冷静に考えて、ミルクだけでも頂くことにした。
はあー、と全身が緩む感覚が、懐かしいとまで思った。いつぶりのことか。
ふと、野菜を柔らかく煮込んだものと柔らかそうなパンにも、手を出した。
*
「…食べたときに、幸せだなと思った。その感覚は悪魔と戦っているときには無いもので、それはもしかしたら、悪魔に対抗するときの力なのではないかと、ふと感じたんだ」
リーフさんは、リーフさんにしては熱弁した。
「だから食事は手を抜くんじゃない」
使い古した鍋。かき混ぜるのはエナ。
「宿代まで使うの、やめて下さいよ」
「そろそろいい具合だな。仕上げに…」
「宿代まで使うの、やめて下さいよ」
「塩はちょっとでいい。旨みを引き立てるように」
「分かりましたけど、宿代まで使うのやめましょうよ」
「食べなかったら死ぬけど、野宿でも死なないだろ。野宿なんて慣れてるし」
「いや、そりゃそうかもしれませんけど、そうじゃなくて」
*
この時だったか、お節介をやかれるほどに切羽詰って自己管理が出来ていないと見られていたのであろう自分を恥じた。
暖かい料理になぜかひとつ涙がこぼれたことは、誰にも言わずに墓場まで持っていく。
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